モナ・リザに向かって人々がカメラを掲げながらゆっくりと前に進む姿があまりにも異様だった。これだけの人が写真を撮っているなら私は撮らなくても良いなと、一人レコーダーをモナ・リザに向けて録音していた音を聞き直していた際に、この作品のシリーズ化を思いついた。カメラのシャッター音が鳴り続けるのを聞いて、絵画自体ではなく、現在の私たちにとってその作品がどういう存在だったのかを、音で残すことも可能だろうと考えた。さらに、それはとある作品から見た人間たちのアーカイブでもある。鑑賞する人たちの様子から、例えばモナリザの正面まで行くには10分弱並ぶ必要があること、混雑具合も隣の人の声が近いことでわかるし、泣く子供もそのままに並び続ける母親熱狂ぶりや、セルフィースティックが禁止されていることもわかる。

Photo: So Mitsuya

Human Archive Center – Archives of Humanity from Perspectives of the Art Works